生産性を高めるオフィスカラー ~色彩心理学に学ぶ色の効果
1.オフィス環境で業績が上がる??
「オフィス環境一つで、業績が変わる!」
そのような考え方が広まってきています。
実際、「業績アップ」という狙いを持って、オフィス環境改善をされる企業も多くなっています。開放感があって、リフレッシュルームがあって、フリースペースもある!そのような場で働く方が快適に過ごせるオフィスが注目を集めている、ということです。とはいえ、物理的な空間の広さや設備面での改善は、コスト規模も大きくなりがちで、なかなか手を出しにくい面もあるかと思います。
そのようなときに着目したいものに、オフィスの色があります。
2.変わる? オフィス・カラーのトレンド
「オフィス、と聞いて思い出す色は?」と質問されたら、皆さんは何色と答えられますか?少し前なら、白やグレーが圧倒的に多かったかもしれませんが、最近では変化が表れています。その一つの理由として、色の持つ効果が科学的にも明らかになってきていることが上げられます。
<色の与える影響 研究例>
色彩の知覚とその心理効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvs1990/17/64/17_64_2/_pdf
同志社大学 理工学部 インテリジェント情報工学科 知的システムデザイン研究室
http://mikilab.doshisha.ac.jp/research/color_psychology.html
作業面背景色の持つ性質が作業者に及ぼす影響
http://www.ngy.hi-tech.ac.jp/labo/miyakoshi/pdf/h19/murata/murata_summary.pdf
3.オフィス・カラーを検討する ~ その一つの視点としての企業カラー、ブランドカラー
では、具体的にはどんな色をオフィスに取り入れたらよいでしょう?一つの方法は、企業理念や企業カラー・企業イメージ、企業ロゴの色、企業ブランドや商品ブランドのイメージ・カラーを利用する、という方法です。
企業が自社のロゴやブランドに用いる色は、企業理念を体現しているものが多いのではないでしょうか?
オフィスにその色を利用すれば、文字として読まなくても、その企業の基本的な理念を常に意識しながら業務にあたることになります。企業理念は企業の根幹でもあり、すべての業務がその理念に沿っていることが理想。とすれば、企業理念を意識できる色を使うことは生産性を高めることにつながる、と言えるわけです。
4.色彩心理学に基づいてオフィス・カラーを検討する
もう一つの方法は、オフィス・カラーの選択にも科学を利用する、というもの。色彩心理学を用いてオフィスの色を検討する、という方法です。
多くの方が色に対するイメージを持たれてかと思われます。典型的な色について、その色が持つ特徴を簡単に示すと、次のように整理できます。
(1) 赤 ~ 強いエネルギーを感じさせる色
赤は活力、情熱、興奮といった強いエネルギーをイメージする色、と言われています。
<メリット>
やる気・元気・自信を引き出す、自分をアピールすることにつなげる
<デメリット>
怒り・攻撃といった、ネガティブな反応を引き出す可能性がある
(2) オレンジ ~ 楽しい雰囲気や温もりを感じさせる色
オレンジは陽気さ、カジュアルさイメージする色、と言われています。
<メリット>
不安を取り除き、プレッシャーから解放する
<デメリット>
嫉妬やわがままを助長する可能性がある、緊張を助長したり、警告されていると感じたりする場合も
(3) 黄 ~知的好奇心を刺激する色
黄は希望、好奇心といった将来や成長と関連するイメージを持った色、と言われています。
<メリット>
理解力・記憶力・判断力を高める、知的好奇心を高める
<デメリット>
成長とは幼さの裏返しの面があるため、甘え・無邪気さ・自己中心的といった子どもっぽさを助長する可能性がある
(4) 緑 ~バランス・安らぎ・癒しを感じさせる色
緑は、中間色に位置することもあり、バランスや平和、安定といったイメージを持った色、と言われています。
<メリット>
癒しをもたらす、安心をもたらす
<デメリット>
緊張感が保てなかったり、保守性や安定志向を助長したりする可能性がある
(5) 青 ~鎮静と抑制をもたらす色
青クールさ、さわやかさ、信頼感など、感情によらない冷静な判断を促す
<メリット>
長時間の単純作業でも集中力を維持する、感情によらない冷静な判断を促す
<デメリット>
活発な議論を抑制しがちな面がある
(6) 白 ~純粋さやはじまりをイメージさせる色
白は、純粋さ、清潔さ、正直であることなどを感じさせる色、と言われています。
<メリット>
何でも受け入れる素直さやその態度を促す
<デメリット>
良い影響も悪い影響も受けやすくなる面がある
5.色の取入れ方
これまで見てきた通り、色が持つイメージにはメリットもデメリットもありますが、うまく使うことができれば効果を促進する力があります。
色彩心理学に基づいて色を選択する場合には、その目的に合わせて取り入れていくのが一般的です。
たとえば、チェック作業などをする場では集中力が必要だから青、打ち合わせでは活発な議論を生みたいから黄、といったような用い方をします。
ただ、その空間のすべてを選択した色にすることは、物理的にはコストの面でも、また、精神衛生上の面からも現実的ではないでしょう。
オフィスに感じる「イメージ」が、「イメージしてもらいたいカラーライトを用いる、仕切りに使うボードにカラーシートを使う、といった方法でも、十分効果が期待できる可能性があり、検討の幅も広げられます。
業績を上げる!生産性を高める!ということを検討する際に、「今のオフィスの色、つまり、今のオフィスでイメージされる色は何色で、本当にその色が最適と言えるのか?」という視点も取り入れてみると、期待している効果を高められる可能性があります。オフィス・カラーも、「しかけ」「しくみ」の一部にできる、ということです。