生産性向上のためにオフィスの香りのコントロールを
~香りの作業効率にもたらす影響
1.意外に気を遣わない香り
オフィス環境を整備するにあたって、その広さや空調、音などに対する対策は多くの企業で取られています。
一方、香りに目を向けると、「悪臭対策」まではしているものの、「心地良い香り」にまで目を向けているオフィスは、まだまだ珍しい状況にあるでしょう。
2.オフィスで「香り」にまで目が届かない理由
「香り」というものは、実は慣れやすい面があります。このことは、ご自身が発している香りである「体臭」や「口臭」に目を向けてみると明らかです。ほとんどの方はご自身の臭いになれてしまっているはず。同じように、その環境に長くいればいるほど、その場の臭いに慣れやすいのです。人の「環境適応能力がなせる業」とも言えるかもしれません。
また、「香り」は、その場に留まることはありません。換気や空気の循環などにより、次第に薄まり、なくなっていく・・・。これも「香り」というものの特徴の一つと言えます。
3.香りは作業効率に影響を与える
このような特徴を持つ「香り」は、オフィス環境においてはあまり目を向けられてはいません。しかし実際には、香りが作業効率に与える影響は大きいとの研究結果があるのです。
この研究は、「香りあり」のグループと「香りなし」のグループとで、文字の同時照合作業を行うものでした。
「香りあり」のグループでも「香りなし」のグループでも、誤答率に関しては、差異は見られませんでした。しかしその一方で、「香りあり」のグループでは、初期の作業と後期作業とで、その反応時間に大きな差が見られなかったのに対し、「香りなし」のグループでは、後期の作業ほどその反応時間が長くなっていたのです。
また、脳波を調べると、「香りあり」のグループほど、集中力の指標となる脳波成分が大きく出現していることも明らかになっています。
このことから、「香り」は作業効率、特に集中力の持続に影響を与えることがわかっています。
4.香りの大きく2つの効果
香りは、「鎮静系」と「覚醒系」の2種類のものがあります。
鎮静系:ラベンダー、イランイラン、カモミールローマンなど
覚醒系:グレープフルーツ、ミント、胡椒など
好みの香りを10分間ほど嗅ぐと、緊張や不安が緩和されること、心理的な混乱状態が緩和されることもわかっています。つまり、「香り」には、ストレスを軽減したり、疲労を回復したり、集中力を高めたり、といった効果があると言えるのです。このような「香り」の効果に目を向け、オフィスに取り入れれば、オフィスでの作業や知的活動の効率化につながる、と考えられるということです。
5.オフィス全体での導入は難しい・・・という場合でも
「香り」の強さに対する感覚の違いは、オフィス全体での「香りの導入」のハードルになりえます。その場合、たとえば、リフレッシュルームなど、限られた空間で利用する、という方法が考えられます。
リフレッシュルームは、多くの企業で導入が進められつつありますが、そもそもその目的は、その名の通り「リフレッシュ」です。その空間の中で、リフレッシュできる香りを楽しむ。そのような行動が、単なる気分転換だけでなく、次の生産活動に向かう準備につながると考えられます。