安全なオフィス設計に関わる法律

安全なオフィス設計に関わる法律

        ~働く人が「労働災害」という名の災害に遭わないために

1.「安全」はオフィス設計に最低限

オフィスには最低限「安全であること」が求められています。オフィスの安全は、「災害から守れる」という視点で整理するとわかりやすいでしょうか。
ただ、ここで言う災害とは、地震や火災といった自然災害のことだけではありません。もう一つ、大きな災害があります。
それは労働災害、つまり、オフィスで働く人の健康に関わる災害のことです。
オフィス設計に関わる法律も、自然災害と労働災害の2つの視点でそれぞれ定められていますが、このうち労働災害から守るための基本的な法律として、労働安全衛生法があります。

2.働く人を労働災害から守るための「労働安全衛生法」の4つのポイント

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保すること、快適な職場環境の形成を促進すること、この大きく2点を目的とする法律で、さまざまな努力義務を企業に課しています。
ここで言う「快適な職場環境」については、厚労大臣から示されている「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」で、次の4つの視点から対策を取ることが望ましいとされています。

(1)作業環境の管理

作業環境の管理とは、オフィスレイアウト、オフィスデザインのこと、と言い換えられるでしょう。作業環境を快適なものとする視点として、温熱条件、視環境、音環境、作業空間、空気環境の5つがあげられています。
温熱条件とは温度や湿度に関わること、視環境とは採光や照明などに関わること、音環境とは騒音対策や防音処理などのこととイメージしやすいですが、作業空間と空気環境とは何のことでしょうか。

作業空間とは、作業の内容に応じて適切なスペースを確保することであり、適度のデスク間の距離を保つことでもあります。一方で作業空間は、オフィスの温熱条件や音環境、視環境にも影響を与えています。

あまりに狭いスペースに働く人がたくさんいれば、当然室温は上がり、必要な会話が増えて物音が大きくなったりもします。つまり、作業空間の適切な確保は、作業環境の第一歩と言えます。また、合わせて通路幅の確保も重要な視点で、これは地震や火災などの災害時の避難路の確保という意味でも重要となります。
空気環境は換気や空気の流れを作ることだけではありません。必要となる「空気の量」という視点も重要です。このことは、昭和47年に制定された「事務所衛生基準規則」第2条を見るとわかりやすいです。
この規則では、「必要となる空気の量」である「気積」を、「労働者1人当たり10立方メートル」確保するよう定めています。

つまり、床面積が広くても、あるいは一人あたりの作業スペースが広くても、「天井が極端に低い」「フロア中が背の高いオフィス家具などで埋め尽くされている」といったオフィスでは「気積」が小さくなるため、作業環境としては不適切だということになるのです。

(2)作業方法の改善

働く人にとってその作業は、心身に何らかの負担を与えます。このため特に不自然な姿勢での作業や大きな筋力を必要とするような作業について、その負担が過度なものにならないよう作業方法を軽減するよう求められています。
具体的な例としては、次のようなものが考えられます。

・モニターの常時監視など、同じ姿勢であることを強いられたりする業務で、全体と細部のスイッチングをしながら監視活動ができるといった、体への負担を軽減する設備の改善を検討すること
・重い荷物の持ち運びが必要とされるような場合は助力機械などの導入を検討すること
・食品メーカーなどにみられる高温・多湿環境を強いられるような場合に、防音カーテンのようなものを利用して、その環境を限定的なものにしたりすること

(3)労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備

働く人にとって労働は心身に疲労を伴うものです。この疲労からできるだけ速く回復できるよう、リフレッシュルームやマッサージルームなどの設置が拡大しています。

(4)その他の職場生活で必要となる施設・設備の維持管理

その他の施設・設備とは、トイレ・更衣室・給湯室・食堂といった生活施設・設備のことです。これらの施設や設備が確保され、また、清潔に維持されていることが求められています。

労働安全衛生法を意識してオフィス環境を見直すと、働く方々のモチベーションアップにつながり生産性の向上という効果も生みやすくなります。職場環境が改善されていくことに不満を言う方はほぼいないからです。そこで、法律やルールがあるから守るという消極的な姿勢ではなく、より積極的にオフィス環境を整備していこうとする考え方がより重要になるのではないかと考えられます。

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