総務省のオフィス改革に学ぶオフィス環境整備の意味とそのポイント
1.総務省が実施したオフィス改革
オフィス環境改革の動きが広がっています。この動きは一般企業のみならず、公官庁でも進められており、実際、総務省は平成27年からオフィス環境改革を行いました。オフィス環境改革は国の機関で言えば総務省の管轄。。つまり、総務省が実施したオフィス改革の視点を取り入れれば、「その効果が発揮しやすい」と考えられているわけです。
総務省が実際に行った「目に見える施策=具多的な実行施策」には、大きく次の3つがありました。
(1)フリーアドレス制の導入
フリーアドレスとは、オフィスで社員一人ひとりに固定した席を割り当てず、空いている場所を自由に使う方式のことです。ただし総務省の場合、課の単位での割り当て領域であるいわゆる「島」は決まっていて、完全フリーではないようです。
(2)「島」の対面式・長方形島型から楕円型への変更
いわゆる「島」の形状の変化です。4人の場合は楕円の半分。間に接続用のテーブルをつなぐことで、最大10名の1つの島を作れるようにとされています。
(3)事前予約制の会議室のみから、予約不要のフリースペース設置と電子ボードの導入
場所の事前予約が必要で、打ち出した紙を配布の上で開催するのが基本だった会議が、フリースペースで、かつ、紙なしでも行うことができるようになっています。
2.オフィス改革の視点と実際 ~総務省は何をポイントにオフィス改革を行ったのか?
では、このような施策を行った背景に、何があったのでしょうか?総務省が実現したかったのは、次の3つの状態だったとされています。
1)ペーパーレス化
紙の量の削減を起点に、机や文書管理場所などスペースを確保すること。
そのために、電子上での情報共有を中心にできるよう整備すること。
2)コミュニケーションの活性化
働く人の間での報告・連絡・相談が密に行われること。
早く意思決定できるようにすること。
3)テレワーク推進
場所に依存しない働き方ができること。
つまり、この3点が実現できている状態にするための具体的なアイデアは何か?が検討され、3つの具体的な施策が採用された、ということになります。
3.実際の効果
では、実際にはどの程度の効果があったのでしょう?
1)のペーパーレス化については、個人周辺文書が8割削減、モノクロ・カラーの出力枚数がともに半減
2)のコミュニケーションの活性化は、アンケートの結果、7割以上がその効果を実感
3)のテレワークについては、その制度導入をする、しないの前に、そもそもの残業時間が各月平均2割程度減少
もちろん、公官庁の業務の「そもそもの性質」などがあり、その効果を額面のみで受け取ることはできませんが、多くの効果があったことは事実です。
仮に自社で同程度の効果が発揮できたと想定した場合、どの程度利益貢献するか、計算してみてください。驚くほどのコスト効果があることを実感できるのではないでしょうか。
4.オフィス改革の本当の狙い
総務省が実際に実施したオフィス改革は、
「オフィスの改革を通じて、国民への質の高い行政サービスを提供する」
という目的が掲げられています。つまり総務省は、顧客である国民に対するサービス向上に向け、具体的なサービスを考える時間を捻出するために、また、効率よくそのサービスを提供するために、オフィス改革を行ったということになります。
実際、総務省はオフィス改革を通じて、業務効率化とコスト意識が高まっていると総括しており、単なるオフィス環境の改革以上の効果があったと考えられます。
5.オフィス改革でもっとも重要になること
このようにオフィス改革でもっとも重要になるのは、何のための「オフィス改革なのか?」という目的を明確にすることです。つまり、オフィス改革自体が目的にならないようにすることが、非常に大切になります。
実際、昨今、自社オフィス環境を改革しようというムードが高まっているものの、その目的を明確にしないまま、具体的にやることを羅列しているようなケースが見られます。
このことの問題は大きく3つあります。
1つめは、本来やるべきことの洗い出しモレが発生する可能性がある点です。予算を執行してしまってから「あれをやればよかった」となってしまっては、オフィス改革をする効果が十分発揮できなくなってしまいます。
2つめは、複数やりたいことが出てきたものの、すべてを実行できないとしたとき、どれを優先して実行するのか?の判断を誤るケースが出てくる点です。
3つめは、仮にオフィス改革によって効率が良くなったとしても、そこで働く人の意識が変わらないとしたら、施策単体の効果しか得られなくなる、という点です。
限られた予算の中で行うオフィス改革だからこそ、目的を明確にして着手することで、より多くの成果を勝ち取れるよう考慮して進めていく必要があります。