オフィス設計時に考慮する必要のある基本的な法律

オフィス設計時に考慮する必要のある基本的な法律

          ~最低限の「安全を確保する」ということ

 

1.好き勝手にはできないオフィス設計

 

オフィスを設計する際には、「満たさなければならない」とされる基準が法律で定められています。ただ、それは決して難しいものではなく、「安全であること」が求められているだけ、と言えます。
つまり、「安全であるとはどういうことなのか?」という視点で法律をとらえれば、それほど無茶な要求がされているわけではないということも理解できる、ということです。
ただし、法律を満たせばそれでいい、と考えることには問題があります。法律が要求するのは、基本的には「最低限のこと」と考えられるからです。

 

2.オフィスの「安全」、大きく2つの視点

 

では、「最低限安全なオフィス」とはどのようなものなのでしょう?それは「災害から守れる、災害時に適切な対応が取れる、災害による被害を最小限にできる」オフィスのことだと考えるとわかりやすいでしょう。ここで言う「災害」とは、大きく2つに分けてとらえることができます。
一つは地震や火災といった災害であり、もう一つは労働災害、つまり、オフィスで働く人の健康に関わる災害です。
オフィス設計に関わる法律も、大きくはこの2つの視点から、それぞれ定められています。
このうち地震や火災などの災害に対する安全を目的に定められている主な法律に、建築基準法と消防法とがあります。

 

3.建築基準法と消防法とに定められていること

 

建築基準法は、生命の安全や健康の観点から、建物の構造や設備などの要件について規定している法律です。災害時も含めた建物全体の安全性、採光・換気・給排水設備・衛生設備などの環境衛生、都市計画を含めた都市環境への合致などが求められています。
一方、消防法は基本的には「火事への備え」に関する法律ですが、建物やその設備によって、消防設備の設置、定期的な点検・報告を義務付けている法律でもあります。
建物・設備の「条件」によって要求レベルが異なる面もあることから、オフィスレイアウトの変更などを行う場合、各種届出が必要となる場合があります。

 

4.オフィス設計時・オフィスレイアウト時の、建築基準法と消防法の視点からのチェックポイント

 

オフィス設計時に、建築基準法と消防法の視点から特にチェックすべきポイントは次の3点です。

(1)導線計画 ~通路の幅と避難経路の確保

オフィスにおける通路・廊下の幅は、片側居室の場合で120cm以上、両側に居室がある場合には160cm以上と定められています。また避難階段までの距離は、基本的には、窓のある居室で14階以下の場合は60cm以内・15階以上の場合は50cm以内、窓のない居室で14階以下の場合は40cm以内、15階以上の場合は30cm以内である必要があります。
「万が一」のときに、上記程度の幅がないと、また、外部へたどり着ける距離でないと、安全に避難することができない、ということです。

(2)消防設備

火災の発生を想定した場合、「消火・排煙できる」状態にする必要があります。
ここでまず必要になるのは、消火器、火災感知器やスプリンクラー、避難器具、誘導灯などの消防設備の設置です。これらの消防設備は、延べ面積、床面積、収容人数、窓の有無、何階にあるオフィスかといった点から、細かく規定がされています。
また、排煙設備の設置も重要です。床面積500㎡以内ごとに必要があるだけでなく、窓の有無、つまり、煙が発生した場合に排煙できる環境を確保することが必要になります。
具体的な排煙方式には2種類ありますが、その一つは、煙が上昇する性質を利用し、煙を建物の外部に排除する自然排煙方式です。建物の外壁に窓を配置し、万が一の時にはその窓を開けて窓から煙を排出することになります。
もう一つは、煙を排出する排煙機器と、その煙の通り道となる風道・ダクトによって構成される機械排煙方式で、主に窓のない空間に用いる方法です。

(3)間仕切り・パーティションの設置 ~天井まで届くものか、そうでないか

オフィスの間仕切り・パーティションは、天井との間にすき間・欄間のあるものと、それがないものとの2種類に大別されます。遮音性などを考えた場合、天井との間のすき間・欄間のない間仕切り・パーティションを選びたくなるかもしれません。ただ、このとき生まれる空間は、空気の流れを遮断することになるため、「一つの部屋」とみなされることに注意が必要です。「一つの部屋」の場合、消防署への届出が必要になる他、火災が発生した場合に備え、消火活動に必要なスプリンクラーや火災感知器などを設置、排煙設備の設置などが必要になります。

 

5.その他、地震や火災などの災害への安全対策として

 

建築基準法と消防法の条件を満たせればそれで十分とは言えません。もう一つ重要な視点として、地震への対応が考えられます。
国の法律とはなっていないものの、東日本大震災後、各自治体が震災対策条例を定めています。これらの条例の多くで、オフィス家具の転倒防止や避難場所の設定、避難用の通路の確保などが定められています。オフィス設計の際には、避難経路を考慮したオフィス家具の配置とともに、特に高さのあるオフィス家具類を固定することなどにも留意が必要と言えます。

 

ここまで取り上げてきたオフィス設計時に考慮すべき法律などは、「命の安全を確保する」ことを基準にすれば、当然考慮すべきことと言えるでしょう。ただ昨今は、オフィスの生産性や効率化という視点を中心にオフィス設計・レイアウト変更を行うケースが多くなっているため、ついつい疎かになりがちなポイントが含まれている可能性があります。

法律やルールがあるから守るというよりは、「オフィス設計・レイアウトの基本要件を明確にすることが、結果的に法令順守につながる」という考え方をした方が、考慮漏れの防止にもつながることになるだけでなく、より安全なオフィスづくりにつながる、と言えるのではないでしょうか。

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