オフィス環境にリフレッシュスペースを
1.増えるリフレッシュスペースを設置する企業
近年、オフィスにリフレッシュスペースを設置する企業が増えています。リフレッシュスペースというと、以前は喫煙スペースが名前を変えたものだったり、ちょっとした飲食の場だったり、が中心でした。
しかし、最近のリフレッシュスペースは、仮眠ブース・マッサージチェアの設置といったワーカーの心身のリフレッシュを目的としたものの他、ビリヤード台や卓球台・ダーツ・バランスボールやストレッチ用マットを置いた軽い運動ができるもの、チェスやボードゲーム・ブロックのような遊びができるもの、書籍・映像・ポスターなどのライブラリなどなど、さまざまなタイプのものが設置されるようになっています。
2.リフレッシュスペースの役割の変化
このようなリフレッシュスペースが設置されるようになってきている背景には、オフィスワークの変化が大きく影響していると考えられます。
企業活動における効率化の流れの中で、オフィスワークは細分化・専門化され、また定型化も進んできましたが、定型化が進むと、より安く量対応が可能な外部委託や自動処理化が進んでいくことになります。
このような中で、多くの企業が、これまでとは違った視点や自由な発想で「創造していくこと」が求められるようになってきています。同じことでも異なる見方をしたり、さまざまなものを組み合わせたりといったことが必要になってきているとも言い換えられます。
とはいえ、一人ひとりが考えられる範囲には限界もあります。そこで、異なる視点を持ったワーカー同士のコミュニケーションや連帯感が重要視されるようになりました。
つまり、リフレッシュルームは、単純な意味でリフレッシュを求めるものから、オフィス内でのコミュニケーション活性化のためのスペースへと、求められる役割が大きく変化してきていると言えるのです。
3.リフレッシュスペースの要件
このような中で、注目を集めるリフレッシュスペース。リフレッシュスペースは、今後、どのような視点で設計していくとよいのでしょうか?
大きくは、次のような視点が大切になると考えられます。
(1)文字通りリフレッシュできること
最低限必要となるのは、リフレッシュできることです。
適度な休憩・リフレッシュは、作業効率という面から重要です。人の集中力に関する研究はさまざまありますが、作業52分に対して休憩17分が最も効率よく仕事ができるというような最新の研究もあるようです。また、オフィスワーカー自身も、身体・精神的な休息や気持ちの切り替えをリフレッシュルームに求めている、という調査結果もあります。
喫煙スペースや給湯施設、自販機などのベンダーマシンがあることは、こうしたリフレッシュの時間を生み出すものとして機能していると考えられます。
(2)複数の視点があることに気づけること
次に必要となるのは発想の転換ができることです。
いつもの道をいつものように歩いていると、その変化になかなか気づかないことも多いのではないでしょうか?
会社に行く、どこかに向かう、というような目的があったとき、人は一つの方向からしか見ない傾向、その目的に集中する傾向があり、また、習慣化を通じてさまざまな情報を「わざわざ」見過ごしたり、省略したりする傾向を持っています。
つまり、いわゆる「煮詰まった状態」とは、あまりに同じ方向から物事を見過ぎた結果、他の発想ができない、他のものに気づかない状態になっていると考えられます。
このような状態のとき、1枚の写真を隅々まで見たり、逆さまから見たり、横から見たりするだけでも、多くの気づきが得られる場合があります。
リフレッシュルームを設置することによって、心身のリフレッシュ以上に、視点を変え、気づきを得る同様の効果が得られるとも考えられています。
(3)多様な人と関われること
リフレッシュルームは、仕事での直接的な関わりが少ない方との接点でもあります。場を設定してまで話をしないまでも、旧知の方と会えば、自然と最近の様子などを話したり、ヒントをもらいたいと話しかけたりすることもあるでしょう。また、面識がない方でも、同じものに関心を持っている方がいれば、それがきっかけで知り合いとなっていくことも考えられます。
多くの方を知っているということは、新たな発想や創造の可能性を高める、ということです。
このように、リフレッシュルームは単にリフレッシュの機能を持つだけでなく、非常に優れた創造の場として機能させられる可能性を秘めています。オフィスワーカーの方々の趣味や関心事などにも注目すれば、いわゆる「化学変化」が起こせるような「しかけ」にしていくこともできると言えます。