ユニバーサルデザイン
少子高齢化社会の中で、年齢や性別、国籍などに関係なく様々な方の社会参加が求められています。
そこで「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた施策が必要となります。
ユニバーサルデザインの実践にはさまざまな障壁があり、現実的には問題が生じてはじめて、特別に配慮する、バリアフリー的解決が必要となるケースもありますが、事後的な対応は手戻りが多く工事費もかさむため、できる限り基本計画や設計段階で、検討を行うことが望ましいです。
また、建物やインテリアなどのハード面ですべてを解決するのではなく、運営段階での人的サポートといったソフト面も併用して計画することが有効となります。
オフィスは、不特定多数を対象とした公共施設と異なり、利用者がある程度特定できるため、個別対応による解決が可能です。
2006年に「高齢者、障碍者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)が施行され、一定規模以上の特別特定建築物を建設する際には、出入口や扉の幅、エレベーターや多目的トイレなどを、基準に適合するよう努力義務が課せられました。
その中でオフィスビルは特別特定建築物の対象外でしたが、近年は、利用者の利便性向上や不動産価値の向上、容積率の緩和などの観点から、ほとんどのオフィスビルが「建築物移動等円滑化誘導基準」に適合し、建てられています。
オフィスにおける留意点
①非常時の避難
非常時の警報は、視覚と聴覚の両方に訴えるものが望ましいです。地上への出入口や直通階段の出入口には、火災報知設備と連動した点滅・音声誘導灯などを設置する必要があります。
②安全な日常生活
日常生活では、どんな人でも段差でつまづいたり、家具などに衝突する危険があります。
床面はできるだけフラットにし、段差が生じる場合には境界をわかりやすくする。他には、ガラス面にシートを貼ったり、衝突の危険のあるものの床面は周囲と異なる材質にするなど、感覚的に危険を回避できるよう様々な工夫をしながらオフィスデザインを考慮する必要があります。
③移動ルートの配慮
車椅子利用者など、階段が利用できない方の移動ルートを確保する必要があります。
また、執務空間内やその周辺だけでなく、食堂など生活空間への移動ルートも考慮して設計することが重要です。
④利便性を考えたゾーン計画
受付ロビーや会議応接室などのゾーンは、駐車場、出入口、エレベーター、多目的トイレなどの近くに配置し、移動ルートを明確にする必要があります。
⑤空間認識への配慮
大規模オフィスでは、自分が居る位置の把握が難しい場合があります。各階に共通する機能空間を各フロアの同じ場所に配置すると、慣れない利用者も位置を認識しやすくなります。また、フロアや方角により、床や壁などの内装や家具の色彩に違いを付けることも有効な手法です。
⑥わかりやすさへの配慮
操作の仕方が単純で扱いやすいことは、誰にとっても望ましいことです。
例えばWCや給湯室等の表示には、文字が無くても一目で意味が分かるピクトサインを用いることも有効です。
⑦自然な姿勢の保持
人体寸法や動作領域に配慮し、自然で楽な姿勢を保持することは、健康面からも重要な要素となります。
長時間使用するオフィスチェアは、エルゴノミクスが十分に配慮されているだけでなく、体格に合わせて自分で簡単に調整できるものを使用しましょう。
⑧疲労の軽減
誰にとっても「見やすさ」は疲労の軽減につながります。
また年齢が高くなるほど、高い照度が必要になることも考慮しておく必要があります。
⑨執務する場の調整
ワークステーションは、個人が使いやすいように調整できるものであることが望ましいです。
その中で調整機能付きの家具やキャスター付の家具は、仕事をしやすい環境をつくるうえで有効です。
組織内に何らかの配慮を必要とする人がいなくても、ユニバーサルデザインを考慮する必要があります。
一時的に車椅子生活を送るようになる可能性は誰にでもあり、配慮を必要とされるお客様がオフィスを訪問することも考えられるからです。
特に、不特定多数の人が利用するエントランスや会議応接室などは、ユニバーサルデザインを取り入れて設計することが重要となります。